要点
- 外貨準備と為替介入のニュースを、円高と米国の金利が投資に伝わる仕組みから読む。
- 株価20%下落と155円から140円への円高で、100万円は約72万円に。そのときの生活費を預金で払えるか確かめる。
- 生活費と予定支出を先に確保し、余裕資金に合わせて投資先と積立額を決める。
2026年9月7日、財務省は日本の外貨準備が8月末に約1兆2,075億ドルとなり、前月末から約796億ドル減ったと公表しました。その前の8月28日には、7月30日〜8月26日の為替介入額が15兆3,993億円と発表されています。外貨準備の公表資料・為替介入の実績
「国のお金の話が、積み立てているS&P500にどう関係するの?」。つながりは、円の値段と、米国の金利です。円を買う介入は円高に、介入資金を用意するための米国債売却は金利上昇に働く場合があります。その影響が重なると、円で見た米国株投資の価値が下がります。
この記事では、このつながりを順にほどき、100万円を投資した場合をシミュレーションします。読み終えたら、生活費と近く使うお金を確保し、余裕資金で積み立てるための家計チェックをしてみてください。
外貨準備は、為替介入にも使う国の備え
ひとこと解説|外貨準備
政府や中央銀行が持つ、外貨建ての債券・預金や金などの資産です。日本では、為替相場を安定させるための通貨売買にも使います。財務省が毎月公表する金額は、月末時点の資産をドルに換算した残高です。
外貨準備は、ドルがそのまま金庫に積まれているようなものとは少し違います。債券などでも保有しているため、使う際に売却して外貨を用意することがあります。財務省の外貨準備の説明
円安を抑えるための「円買い・ドル売り介入」なら、用意したドルを売り、円を買います。円を買う注文が増えるので、円高に働く仕組みです。財務省も、円買い・外貨売り介入では外貨建て債券の売却などで資金を調達すると説明しています。財務省の介入資金の説明
今回の数字から読めること
公表されたのは「約1か月の介入額」と「月末の外貨準備の残高」です。外貨準備には価格が動く資産も含まれるため、残高の減少は、資産を使った額に加えて価格・為替の変化も反映します。約796億ドルの減少を、そのまま米国債の売却額に置き換えると、値動きの影響まで売却に数えてしまいます。
ここから家計に持ち帰りたいのは、介入の資金調達と通貨売買が、債券市場と為替市場につながっていることです。次に、その動きが株式へ伝わる経路を見ていきます。
米国債が売られると、なぜ株価にも影響する?
米国債は、米国政府にお金を貸すための債券です。満期までに受け取る利息や元本が決まっている債券も、途中で売買するときの価格は動きます。
売りが買いを上回ると、債券の価格は下がりやすくなります。受け取るお金が同じなら、安く買うほど投資額に対する収益は大きくなります。この収益の割合が「利回り」です。つまり、債券価格が下がると、利回りは上がるという関係があります。
米国債の利回りは、企業などがお金を借りるときの金利の目安にもなります。利回りが上がると、企業の新たな借入や借り換えの負担が増え、利益を圧迫する場合があります。さらに、債券で得られる収益が増えると、株式の魅力が相対的に下がり、株価を押し下げる力になります。セントルイス連銀の金利解説・FRBの金利と株価の説明

このため、円高と米国株安が重なる場面を想定しておく意味があります。ただし、ここまで説明したのは、条件がそろったときに影響が伝わる経路です。実際の市場では、債券を買う投資家、米国の金融政策、企業の利益見通しなども同時に働きます。今回の発表は、円高・株安への備えを見直す材料として使いましょう。
円で買ったS&P500投信も、株価と為替で動く
S&P500は、米国の代表的な大企業の株価をまとめた指数です。それに連動する投資信託を円で買う場合も、投資先は米国株です。指数を作るS&P DJIの説明
ここでは、為替の変動を抑える取引をしない「為替ヘッジなし」の商品を考えます。持っている商品の目論見書で、「為替ヘッジ」の方針を確認してみてください。
たとえば、1ドル155円なら100ドルは1万5,500円。1ドル140円なら、同じ100ドルでも1万4,000円です。ドルで持つ価値が同じでも、円高になると、日本で使える金額は減ります。
三菱UFJアセットマネジメントも、為替ヘッジを原則行わないS&P500投信では、指数が上がっても円高で基準価額が下がる場合があると説明しています。運用会社による株価と為替の解説
100万円を投資したら? 四つのシミュレーション
開始時の投資額を100万円、為替を1ドル155円と置いて計算しました。株価と為替を次の四通りに変えると、円で見た資産額はこうなります。

米国株が10%上がり、140円へ円高になると約99.4万円。株価の上昇分を円高が打ち消します。一方、株価が変わらず170円へ円安になると約109.7万円。円で見た結果は、株価と為替の組み合わせで決まります。
株価が40%下がり、130円へ円高になった例では、約50.3万円です。大きく下がった場合の金額も見ておくと、自分が持ち続けられる投資額を考えやすくなります。
株価20%下落と円高が重なると、約72.3万円

株価が20%下がると、100万円に対して80%の価値が残ります。その価値に、為替の変化である140円÷155円を掛けます。
100万円 × 0.8 ×(140 ÷ 155)= 約72.3万円
図の金額は、設定した株価と為替を使ったシミュレーション結果です。配当、費用、税金、追加購入は省き、二つの影響を取り出しています。株価・為替の設定を変えれば結果も変わります。自分の投資額でも同じ計算をしてみましょう。
生活費を確保して、余裕資金で投資する
投資を長く続けるために、まず生活費と、使う時期が決まっているお金を分けて確保することから始めましょう。家賃や食費に加えて、税金、学費、引っ越し費用なども書き出します。
資産が同じ200万円の、二つの家計を比べます。必要な生活費は月20万円。収入が3か月止まると、60万円の支払いが必要になります。

現金100万円のAさんは、60万円を払っても40万円残ります。現金20万円のBさんは40万円不足するため、ほかの資金を用意するか、投資の一部を売る必要があります。すぐ使える現金があると、相場が下がっているときも、生活と投資を切り分けて考えられます。
備える金額は、自分の家計に合わせて決めます。収入の安定性、扶養家族、借入の返済、予定している支出を確認してください。図では違いを見やすくするため、現金を100万円と20万円に設定しています。
現金を多く持つほど支払いに備えやすくなり、株価が上がったときに得られる利益はその分小さくなります。必要な現金を先に決め、その残りを長く運用する。これが余裕資金で投資するという考え方です。
投資先と積立額を、今の家計に合わせる
S&P500は多くの企業に分散する一方、米国の大型株を中心に持つ投資です。別の運用会社のS&P500投信を増やしても、投資先は多くが重なります。

まず資産を「円の預金」「米国株」「それ以外」に分け、金額を書いてみましょう。米国株中心の別の投信や個別株も持っているなら、上位の投資先を見比べると、重なりが分かります。商品名より、中身と使う予定の時期で整理するのがコツです。金融庁「資産形成の基本」
今日の家計チェック
① 次の家賃・税金は、預金から払える? 支払日と金額を書き出し、その分を預金で確保する。収入が減った場合の生活費も別に見積もる。
② 投資の100万円が約72万円になっても、生活費は足りる? 今回の株価20%下落・155円から140円への円高を当てはめると、投資額500万円なら約361万円になる。そのとき預金だけで何か月暮らせるか、家計のメモに書く。
③ 収入が減った月も、今の積立額を続けられる? 毎月の手取りから生活費と予定支出への積立を引き、投資に回す金額を決める。支払いに回す預金が減り続けるなら、投資の積立額を下げて整える。
NISAで買っている場合も、この順番は同じです。NISAは投資の利益に対する税金を優遇する制度で、商品の値動きはそのまま受けます。生活の備えを整えたうえで、長く運用するお金に使いましょう。金融庁「NISAを知る」
私なら、ニュースを見た日に最初に開くのは、売買画面より家計のメモです。支払うお金、持っている投資、毎月の積立。この三つを一度並べてみると、今の自分に合う備え方を選びやすくなります。
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